キャリアアップをしたいけど、金銭的に厳しいです・・・
何か良い方法があれば、教えてください!
このようなお悩み・疑問にお答えします。
この記事で分かること
- 専門実践教育訓練給付金の概要:資格取得・学習ができる講座等の受講料の一部が戻ってくるおトクな制度
- 利用状況と効果:幅広な年代の人が受講し、年収アップが期待される
- 専門実践教育訓練給付金の申請方法
私たち夫婦も利用したことがある「専門実践教育訓練給付金」というおトクな給付金があるので、わかりやすく紹介しますね!
専門実践教育訓練給付金とは?
専門実践教育訓練給付金は、中長期的なキャリア形成を支援することを目的に、専門的かつ実践的な資格取得・学習ができる講座等を受講した場合、受講料の50%(年間上限:40万円)が戻ってくるおトクな制度です。
また、講座の修了に加えて、資格取得等をし、翌日から1年以内に被保険者として雇用された場合は、追加で受講料の20%が給付されるため、トータルで受講料の70%がもらえます。
出典:厚生労働省ウェブサイト 教育訓練給付制度
専門実践教育訓練給付金の対象になる資格や講座の一例は、以下の通りです。
- 介護福祉士、保育士のような国家資格
- 法務系の資格取得に実績のある専門学校などの職業実践専門課程
- 通信制を含む看護師、経営学修士(MBA)などの大学院プログラム
- 情報通信技術(Oracle、Cisco)などの資格取得を目標とした課程
- AI、データサイエンティストなどの第四次産業革命スキルを習得する講座
介護福祉士や美容師など、手に職を付けられるような資格取得に加えて、MBAなど実践的な知識を学べる大学院などに対してもお金が支給されるため、これらを検討している人は必見です!
厚生労働省が提供する検索システムで対象資格や講座を確認できるので、ご興味がある方はぜひ調べてみてください!
【教育訓練給付制度 検索システム】
https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/
なお、専門実践教育訓練給付金を利用する上でのポイントは、以下の3点です。
1.指定講座を受講している間は受講料の50%(年間上限40万円)、修了すると追加で受講料20%が支給される(年間上限56万円)※
2.事前にキャリアコンサルティングを受ける必要がある
3.出席日数が不足している場合や極端に成績不振の場合は支給が打ち切られるケースがある点に注意
※ 修了後の追加支給は、修了した日の翌日から1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合(受講中から雇用保険の被保険者として雇用されている場合も、修了した日の翌日から1か月以内に申請すれば追加の給付を受けられます)
3.に記載の通り、途中で支給が打ち切られてしまった場合、修了まで全額自己負担になる点には注意が必要です。
キャリアコンサルティングを受ける必要がある上に、受講する講義の出席や成績も定期的に見られるので、しっかりとやり抜く覚悟が必要でした
専門実践教育訓練給付金の利用状況・効果
どの講座が人気か?
専門実践教育訓練給付金の申し込み数が多い講座ランキングは以下の通りです。
出典:厚生労働省 第184回雇用保険部会 資料1
グラフより、「介護福祉士」「キャリアコンサルタント」「看護師」「社会福祉士」といった国家資格の人気が高いと言えます。
国家資格以外では、DXを推進する人材に求められる知識・スキルを習得できる「第四次産業革命スキル習得講座」のほか、社会的・国際的に活躍できる高度な専門知識を持った人の教育を目的とした「専門職大学院」が人気を集めており、受講者数が増加傾向にあります。
このように、資格がそのまま仕事に直結する介護・社会福祉、看護師、キャリアコンサルタントなどの取得を目指す人に加えて、短期間でITスキルや高度な専門知識を身に着けたい場合にも活用する人が多い制度と言えます。
在籍状況と年齢はどれくらい?
令和4年度における専門実践教育訓練の受講開始時の在籍状況と年齢は、以下の通りです。
【受講開始時の在籍状況】
在職中 | 77.1% |
---|---|
離職中 | 22.9% |
【受講開始時の年齢】
10代 | 0.0% |
---|---|
20代 | 20.7% |
30代 | 27.2% |
40代 | 29.1% |
50代 | 19.1% |
60代 | 3.7% |
70代以降 | 0.2% |
働きながら専門実践教育訓練を受講する人が77.1%であり、資格取得等と仕事を両立している人が多い傾向があります。
また、20代~50代まで幅広な年代の人が受講をしており、年齢に寄らず、学ぶ意欲がある方が活用している制度と言えます。
専門実践教育訓練で年収アップは期待できる?
読者の皆さまが気になるのは、専門実践教育訓練を受けることで年収アップできるのか?というポイントかと思いますが、結論から言うと、受講開始時に働いていた人の約4割、受講開始時に離職していた人の約5割が賃金が増加しているため、年収アップが期待できると言えます。
【在籍者:専門実践教育訓練給付金受給者の訓練修了後の賃金変化】
出典:厚生労働省 第184回雇用保険部会 資料1
【離職者:専門実践教育訓練給付金受給者の訓練修了後の賃金変化】
出典:厚生労働省 第184回雇用保険部会 資料1
専門実践教育訓練の修了後に転職し、年収がアップした経験があるので、お金を貰いながらキャリアアップにも繋がるおトクな制度だと思います!
専門実践教育訓練給付金を利用できる人
専門実践教育訓練給付金を含む、教育訓練給付制度を受けるためには雇用保険の加入期間などの条件があります。
厚生労働省がフローチャートを用意しておりますので、まずは、ご自身が給付を受けることができるか確認してみてください。
出典:厚生労働省 教育訓練給付制度のご案内
上記フローチャートを踏まえて、専門実践教育訓練給付金の受給条件をまとめると、
【初めて制度を利用する人】
・雇用保険の被保険者であった期間が通算2年以上(=雇用保険の加入期間が2年以上)
・雇用保険の被保険者でない期間が1年以内(=離職している場合、離職後1年以内)
の2点を満たすこと
【制度の利用が2回目以降の人】
・前回の教育訓練の受講開始日以降、雇用保険の加入期間が3年以上
・前回の教育訓練給付金の受給日から新たな受講開始日前までに、雇用保険の加入期間が3年以上経過
・雇用保険の被保険者でない期間が1年以内(=離職している場合、離職後1年以内)
の3点を満たすこと
なお、雇用保険の被保険者であった期間は通算されるので、転職をした場合でも「前職の雇用保険の被保険者期間」と「現職の雇用保険の被保険者期間」の合計で判定されます。
直近で転職をしていても、前職と現職の雇用保険の加入期間を合算できるのはありがたいですね!
専門実践教育訓練給付の受給資格があるか不安な方は、「教育訓練給付金支給要件照会票」に必要事項を記入し、お住まいの地域を管轄するハローワークに提出すれば確認できます。
なお、本人確認および住居所の確認できる官公署が発行した確認書類(運転免許証、国民健康保険被保険者証、雇用保険受給資格者証、住民票の写し、印鑑証明書など、いずれもコピー可)を合わせて提出する必要がある点に注意してください。
結果が届くまで少し時間はかかりますが、「教育訓練給付金支給要件回答書」にて照会結果を通知してもらうことができるので、受給資格に自信が無い方は、チェックすることをオススメします!
専門実践教育訓練給付金の申請方法
専門実践教育訓練給付金の給付手続きの大まかな流れは、以下フローチャートの一番左(ピンク)の通りです。
出典:厚生労働省 教育訓練給付制度のご案内
専門実践教育訓練は「受講前」に事前手続きが必要です!それぞれのフローの詳細も以下でまとめますね!
「受講前」の申請手続き(訓練前キャリアコンサルティング・受給資格確認)
専門実践教育訓練給付金を申請する場合、受講開始日の1か月前までに以下の手続きをする必要があります。
・「キャリアコンサルタント」と呼ばれる中長期的なキャリア形成を支援するための研修を受けるなど一定の要件を満たした人から、訓練前キャリアコンサルティングを受ける
・職業能力の開発・向上に関する事項を記載したジョブ・カードを作成する
・ハローワークなどで配布する「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」と「ジョブ・カード」「本人確認書類」などをハローワークへ提出する
ハローワークに提出する書類や詳細については、厚生労働省が公表している「専門実践教育訓練の給付金のご案内」を参考にしてください。
なお、書類の提出は原則として申請者の住所を管轄するハローワークである点にご注意ください。
「受講中」の申請手続き(講義の受講)
専門実践教育訓練給付金は、受講中に受講開始日から6か月ごとの期間(支給単位期間)の末日の翌日から起算して1か月以内が支給申請期間となっており、申請期間中に手続きをする必要があります。
なお、受講前の申請手続きと同様、申請者の住所を管轄するハローワークに必要書類を提出する必要があります。ただし、疾病や負傷、在職中などを理由にハローワークへ出向くことが難しい場合は、郵送で手続きすることもできます。
在職中はハローワークへ出向くことが難しいので、郵送がオススメです!書類は受講前の手続き時に職員の方にお伝えするともらえますよ!
受講中の申請手続きにおける提出書類は、以下の通りです。
- 教育訓練給付金の受給資格者証 ※受講開始前の手続き後にハローワークから交付されます
- 教育訓練給付金支給申請書
- 受講証明書 ※受講終了後は専門実践教育訓練修了証明書
- 領収書
- 返還金明細書
- 教育訓練経費等確認書
- 専門実践教育訓練給付最終受給時報告 ※専門実践教育訓練に係る最後の支給単位期間について教育訓練給付の支給を受けようとする場合に必要
- 専門実践教育訓練給付追加給付申請時報告 ※専門実践教育訓練修了後、資格取得等したことにより支給申請した場合に必要
- 資格取得等をしたことにより支給申請する場合は、資格取得等を証明する書類
- 郵送による申請(やむを得ない理由があると認められた場合に限る)の場合は、証明書などの添付書類
教育訓練給付金の受給資格者証は後日郵送で返送されるので、ご安心ください。
受講終了後の申請手続き(修了・支給申請)
専門実践教育訓練の受講修了後、目標としている資格を取得等し、かつ修了した日の翌日から1年以内に被保険者として雇用された場合、追加で受講料の20%の給付を受けることができます。
この追加給付を受けるための支給申請期間は、雇用された翌日から起算して1か月以内(被保険者として雇用されている人は、専門実践教育訓練を修了し、かつ、資格取得等した日の翌日から1か月以内)に手続きをする必要があります。
必要書類については、上記の「受講中」の申請手続きをご参照ください。
講義受講中に失業している場合、支援給付金の受給が可能
初めて専門実践教育訓練給付金を受給する場合、以下の条件を満たしており、失業状態にあるとき、「教育訓練支援給付金」を受給することができます。
・専門実践教育訓練給付金の受給資格があること(雇用保険の被保険者であった者に限る)
・専門実践教育訓練を修了する見込みがあること
・専門実践教育訓練の受講開始時に45歳未満であること
・受講する専門実践教育訓練が通信制または夜間制でないこと
・受給資格確認時に一般被保険者でないこと。また、一般被保険者ではなくなった後、短期雇用特例被保険者または日雇労働被保険者になっていないこと
・会社などの役員に就任していないこと(活動や報酬がない場合はハローワークで要確認)
・自治体の長に就任していないこと
・今回の専門実践教育訓練の受講開始日前に教育訓練支援給付金を受けたことがないこと
・教育訓練給付金を受けたことがないこと(2014年10月1日前に受けたことがある場合は例外あり)
・専門実践教育訓練の受講開始日が2025年3月31日以前であること
(注)受講開始日において一般被保険者である場合、「教育訓練支援給付金」は受けられません
出典:厚生労働省 教育訓練給付制度のご案内
離職直前の6か月間で支払われた賃金額に基づいて算出された基本手当の日額の80%相当(上限あり)が支給されるため、失業中でもお金のことを気にせず、生活費などに充てることができることから、スキルアップに専念できます。
支援給付金の申請は、専門実践教育訓練給付金の手続きと合わせて行いますが、ハローワークで2ヵ月に1回「失業の認定」を受けなければならない点にも注意が必要です。
条件がたくさんあるので、正式な受給資格については、必ずお住まいの地域を管轄するハローワークで確認するようにしてくださいね!
その他の教育訓練給付制度
「専門実践教育訓練」の給付制度以外にも、「特定一般教育訓練給付」および「一般教育訓練給付」があります。
特定一般教育訓練給付は、再就職しやすい資格取得や早期のキャリア形成に関する教育訓練を受けた際、修了後に受講費用の40%(上限20万円)が支給されます。
一般教育訓練給付は、英語検定や簿記検定などの資格取得や博士・修士の学位取得など、働く上での職業能力を高め、雇用の安定・就職の促進に繋がる教育訓練を受けた際、修了後に受講費用の20%(上限10万円)が支給されます。
出典:厚生労働省ウェブサイト 教育訓練給付制度
専門実践教育訓練給付は、3つの教育訓練給付制度の中でも、最も専門性が高い資格取得やスキル修得ができるため、最もキャリアアップや年収アップが期待される制度と言えます。
まとめ
この記事でまとめてきた「専門実践教育訓練給付金の概要」、「専門実践教育訓練給付金の利用状況・効果」について、改めてまとめると
【専門実践教育訓練給付金の概要】
・資格取得・学習ができる講座等を受講した場合、受講費用の最大70%をもらえるおトクな制度
・介護福祉士や美容師などの国家資格やデータサイエンティスト関連の講座も対象
【専門実践教育訓練給付金の利用状況・効果】
・介護福祉士、キャリアコンサルタントなどの国家資格の人気が高い
・DXを推進する人材に求められる知識・スキルを習得できる講座、専門職大学院も人気
・訓練終了後の年収アップも期待できる
専門実践教育訓練給付金をもらうためには、いくつかの条件を満たす必要があり、事前の手続きも必要ですが、キャリアアップを目指す上でとても便利な制度です。
給付金の対象資格や講座はいずれも決して安くはないため、受講費用の最大70%も支給されると家計への不安も抑えることができます。
リカレント、リスキリングといった社会人の学び直しが注目される中、国も有用な制度を提供しているので、本記事でご紹介した専門実践教育訓練給付金をうまく活用しながら、より良いキャリア形成を目指してみてはいかがでしょうか?